マンガでわかる
「糖化学ノックイン」

「糖鎖ケミカルノックインが拓く膜動態制御」(略称:糖化学ノックイン)について、
漫画家のことり野デス子先生にわかりやすく解説してもらいました。

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化学は「分子レベルのものづくり」です。生命や物質は目に見えないほど小さな部品「分子」の組み合わせでできています。そのバランスが崩れた状態が「病気」。病気で崩れた部分を「薬」という化学物質で調節、または変化させて「治す」。私、東京大学大学院薬学系研究科・講師の生長幸之助は、この分子の「組み合わせ」について考えています。今回の研究は「糖化学ノックイン」。膜に埋もれた「糖タンパク質」の動きをコントロールする技術を作りたいと考えています。
薬をからだの狙った場所で働かせる技術を「ドラッグデリバリーシステム」と言います。「糖化学ノックイン」の目指すものの1つは、細胞から「膜カプセル(例:エクソソーム)」を取ってきて、薬と「仕掛け(人工糖鎖+タンパク質)」を組み込んで、動き方を調べたり自由にコントロールしたいというものです。この研究が進めば、膜と糖タンパク質の動きを理解することで分子が集まってつくられる存在「生命」、不具合を起こした状態の「病気」について理解が進むでしょう。また、「薬を詰め込んだエクソソーム」をコントロールできればドラッグデリバリーシステムに利用できるのではと考えています。
でも反応化学者の自分だけでは分野の境界にある問題をクリアできないと考え、生命科学者と一緒に取り組むことにしました。反応・合成化学分野の真鍋良幸(阪大理・助教)が担当するのは「つくる」。糖をタンパク質にくっつけて仕掛けをつくり、エクソソームに組み込みます。生命科学分野の堀雄一郎(阪大工・准教授)、浅野圭佑(京大工・助教)が担当するのは「みる」。「仕掛け」を組み込んだエクソソームがどう動くか、目印を付けて観察します。生長幸之助(東大薬・講師)と上田善弘(京大化研・助教)が担当するのは「あやつる」。「仕掛け」を変えてエクソソームを好きなように動かしたいというものです。分野の「境界」を越えることで問題の共有や面白いアイデアが生まれます。
化学の研究は体力も気力も必要ですが、思わぬ結果からアイデアがひらめく瞬間がワクワクします。ひらめきはたくさんの実験と経験のつなぎ合わせです。「糖化学ノックイン」は正確に病巣を見つける必要がある病気…たとえばガンの診断・治療などに結びつくかもしれません。研究がいつか誰かの役に立てば嬉しいです。

マンガ:ことり野デス子 監修:糖化学ノックイン研究チーム

研究を詳しく見る

ことり野デス子先生のプロフィール

漫画家、イラストレーター。
研究アウトリーチなど、むずかしいことを楽しくやわらかく描いています。

代表作:なれそめエッセイ「漫画家と異星人」

公式HP:http://cotoricotori.com

ことり野デス子の自画像